2019.03.14

日本橋 酒と肴 よしまさ

日本橋 酒と肴 よしまさ

「包丁にこだわるお店は絶対に美味しい。」

素材にこだわる飲食店が増えた中、その素材を活かすために、料理人が行きつく先、それが道具へのこだわり。

料理人はより美味しい料理を提供したい一心である。
包丁の質や手入れにまでこだわるお店が、まずいわけがない。

包丁ブランド堺一文字光秀は、味へのこだわりが道具にまで昇華した料理人をたくさん知っている。

グルメサイトのレーティングでは紹介しきれない本当に美味しいお店を、料理人の魅力を通して紹介できたら。

そんな思いから、「味繋」企画は始まった。

ミナミの飲食店激戦区、ウラなんばの外れに、ひっそりとたたずむ和食料理店がある。
日本橋 「酒と肴 よしまさ」名店は、どのようにして生まれたのか。

29歳で飲食業界に。

1972年生まれ。設備関連の仕事を29歳までしていた吉村さん。そのキャリアは将来への不安から始まっている。
「親の面倒を見ることも考えると、設備業界で食べていけるとは思わなかった。」
調理師専門学校からプロの料理人になるコースならスタートは18歳。
だが吉村さんがこの道に入ったのは29歳の時である。これまでのキャリアをすべて捨て、裸一貫でのキャリアチェンジ。

決して簡単な決断ではない。

「飲食店10社受けましたが、全部落ちました。たまたま地元の東大阪のお店で募集があったので、面接を受けると合格しました。当時は長髪で、『どうせすぐやめる』という視線をひしひしと感じたので、丸刈りにして翌日出社しました。」

翌日先輩達は大笑いで吉村さんを迎えたが、その覚悟は少しずつ周囲にも伝わっていった。

結果的に吉村さんがここに在籍したのは一年。「すぐやめる」ことになる。ただ、その辞め方は先輩達の予想とは真逆だった。
「一人前になって独立したい」その思いと焦りに、大将は真摯に答えた。

「本当に独立したい、という気持ちを汲んでくれた大将が、『どうしてもスタートが遅いとこのお店ではおいまわし(仕込みや皿洗い)しか仕事が回ってこない。覚悟があるなら、良いお店を紹介する』と背中を押してくれたんです。」

ポケットの中に110円しか入っておらず、たまごサンドを買って泣きながら食べて帰りました。

二店舗目は、本町にある、経験豊富な板前が2人いる料理店。ここで料理人に必要な知識を教わった。
「まず、7時半には板場にいないといけない。家から40分かかり、仕事が終わるのが11時過ぎ。そんな日が続いて月給は14万円くらいでした。」年齢も30になっており、生活も苦しい。ある日、仕事が終わり空腹でコンビニに入ったが、ポケットに手を入れると110円しか無い。

たまごサンドを買って帰路についた。

両親のこと、仕事への不安、疲れ。
たまごサンドを頬張った瞬間、様々な感情が涙となって、あふれ出た。

 

道具へのこだわり

「とにかく、給料は安いが授業料を払っているんだと思って必死で頑張りました。ある日、道具を使ったまま放っておいたことがあった。そのことを師匠にめちゃめちゃ怒られたんですね。」

「道具を大事にできないなら、料理人などやめてしまえ!」

それまで腕だけが大事だと思っていた吉村さんにとって、衝撃だった。
かといって良い道具を買うお金はなかったので、とにかく腕を磨く日々。

「三店舗目に入った魚居酒屋での経験が大きかったと思います。大小様々な魚を捌かなければいけない。色々な板前が、我流で魚を捌くのを見るのはすごく勉強になりました。そこで道具の手入れの仕方や使い方がどんどん身につきました。その時ですね。師匠が言っていた『道具を大切にしろ!』の意味がわかったのは。」


歳が近い上司との出会い。

独立のためには、もっと知見もお金も貯めないといけない。リーマンショック直後の独立を避け、四店舗目の修行先に移る。

「次のお店は、高級うどん店でした。そこで私の上司になったのが、鳥取の料理旅館出身の自分と一歳しか変わらない方でした。非常に勉強熱心な方で、青鋼、白鋼などの違いを知ったのもその時ですね。当時は『あおこう?苔ですか?』という感じでしたが(笑)」

笑いながら語る吉村さんだが、年齢の近い先輩に刺激されていたことは想像に難くない。


さすがというか、素敵に切れます。

「高級うどん店での修行の後、お金もたまってやっとお店を出すことができました。道具をそろえられたのもその頃ですね。堺一文字光秀の包丁は、薫さん(一文字厨器スタッフ)とのつながりがあって出会いました。その時購入した包丁(白二鋼 霞研ぎ 出刃6寸/白一鋼 紋鍛錬 柳刃8寸)は素晴らしいですね。高級魚の石鯛を捌く時に、少し触れただけで切れてしまったので『気をつけないとな』と思いました(笑)」

「若い子は力任せに叩き切っては刃を傷め、包丁の刃をのこぎりみたいにしてしまいますが、刃の付け方と、魚への入れ方でほとんど力は要りません。数ミリずれるとダメですが。」

道具にこだわりのある料理人は、なぜこの道具なのか。どうやって使うのかということにすべて裏付けがある。

「町屋(座席数20前後のお店)だと8寸の柳刃が便利ですね。尺は欲しいと思っていましたが、切り方と刃の付け方で取り回しよく使えるので、重宝しています。」

コースの時は、お客様に合わせてすべて考えます。

「激戦区で生き残るためには、何かに特化するしかないと思います。幸い私は新鮮な魚が手に入るルートを得ています。それに合わせて日本酒も選んでいますね。コースの予約がある時も、男女や年齢層、要望をすべて聞いてメニューを考えます。この前一文字さんがみなさんでいらっしゃった時は大変でしたよ。ご年配も若い人もいらっしゃるでしょう?だから、あっさりした刺身を出しつつ、若い子向けにこってりした料理も同時に出して、それぞれが楽しめるようにしました。」
半年前のコースの内容まで覚えていたのには驚いた。

紹介や常連が増えているのはこの気遣いによるものだろう。

連日にぎやかなウラなんばの夜だが、たまには少し外れたところで、ゆっくり魚を味わってみてはいかがだろうか。

酒と肴 よしまさ

 

予約・問い合わせ 050-5570-3859

住所 大阪府大阪市中央区日本橋2-8-16 日本橋レジデンス 1F


営業時間    

11:30~15:00(L.O.14:00) ※土曜はランチ営業なし

17:30~23:00(L.O.22:00)

定休日 日曜日