2020.09.22

職人の目線 煌シリーズ 中砥石について

職人の目線 煌シリーズ 中砥石について
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堺一文字光秀の包丁を研ぎ続けている職人の視点で商品紹介をする「職人の目線」

当社のおすすめの中砥石として人気の「煌 中砥石#1000」、「煌 中砥石#1000軟口」の二種類が有ります。

どちらも研磨力、研ぎ味が非常に良好で私も研ぐ時によく使用しているお気に入りの砥石です。
ただ同じ製法、同じ番手なのでこの二つはどう違うのかと質問されることが多いです。

今回はこの二つの砥石を研ぎ比べながら二つの特徴をご紹介していきます。
 

 

基本スペック
サイズ 75×210×30mm
番手 #1000
製法 レジノイド製法

上記のスペックが同じ二つなので正直大きな違いがあるわけではありません。

レジノイド製法とは研磨剤をレジノイド系の合成樹脂で成型した砥石で、200度程度の低温で焼き入れるため中の樹脂が高温で焼き切れることがないので水をさほど吸うことがなく研ぎはじめに水につけておく必要がありません。
砥石としては適度な弾力があり、滑らかな研ぎ味が特徴です。
その反面ビドリファイド系の砥石と比べると研磨力が劣ります。

レジノイド製法は昔は仕上げ砥石がメインでしたが、最近は中砥石にもこの製法で造られることが増えてきました。
 

 

それではこの二つの砥石の違いを説明させていただきます。

それはズバリ砥石の硬さが違います。
ただそれだけなのですが、この硬さが違うだけで包丁の種類を研ぎ分けたり、研ぎ方を変えたりすることが出来るのです。
 

研ぎ汁が少なく少し滑る感じがするが、刃金部分(鋼)は傷が浅くよく光るので刃境がはっきりします。

 

・煌 中砥石 #1000について

レジノイド系の砥石としては少し硬めの分類に入ります。
水をほとんど吸わないので表面の常に水が浮いている状態です、そのためか研ぎ汁がさほど出ないので研磨力がそれほど高いわけではありません。
その反面研ぎ味が非常に滑らかで、仕上げ砥石を使用しているような感触の砥石で軟口よりも研ぎ傷が浅く仕上がりが綺麗になります。

メリット 砥石減りが少ない・仕上がりが綺麗に研げる
デメリット 研磨力が高くない(ステンレス系とは相性が悪い)

 

研ぎ汁が多き出るので良く研げるのですが、全体に研ぎ傷が深く残るので仕上がりは荒目です。

 

・煌 中砥石 #1000 軟口について

「煌 中砥石#1000」が少し硬かったため柔らかめに改良して製作したのがこの砥石になります。
中砥石としてはかなり柔らかく、非常によく研ぎ汁がでますので研磨力はとても高いです。
柔らかい砥石は刃との接地面が広くあたるので、研いだときにムラが出にくいので和包丁、洋包丁問わず万能に使える使いやすさが有ります。
ですが、研ぎ汁が良く出る砥石の特徴として研ぎ傷が深く残る傾向にあります。

メリット やわらかく研ぎ易い・研磨力が高い
デメリット 砥石の減りが早い・研ぎ傷が深い

 

 

包丁の鋼材によって若干研いだ感触は変わるかもしれませんが、私が研ぐ時は軟口を使用することが多いです。
使う頻度としては「煌 中砥石#1000軟口」が一軍クラス、「煌 中砥石#1000」が二軍クラスくらいになります。

軟口は研磨力が高いのもメリットですが、ソフトな砥石は研いでいて素直に刃に当たります。
研ぎ傷は深くなりますが、そのあと仕上げ砥石を細かく挟みますので傷の深さはあまり気にしていません。
研ぎは次の砥石へのつながりも大事なので仕上げ研ぎまで丁寧にされる方は軟口をお勧めします。
また和包丁、洋包丁どちらもハマグリ刃に仕上げることが多いので柔らかい砥石のほうが丸みを作りやすいのも良いところです。

「煌 中砥石#1000」は砥石の硬さが気になる時が有ります。
そのためかステンレス系の包丁を研ぐ時は砥石の上で滑る感触が強く相性が悪いかもしれません。
この砥石をお勧めする方は中砥石までで研ぎ終わる方にはこちらのほうが良いです。
仕上げまで当てない方も結構いらっしゃいますので、その場合は研ぎ傷が浅い分だけ切った感触も滑らかになると思いますので仕上がりが綺麗なこちらの砥石をおすすめします。