2019.05.23

出刃包丁の選び方

出刃包丁の選び方

1.産地

出刃包丁は片刃包丁ですが、片刃包丁を選ぶならまず堺のものがおすすめです。

関、武生、土佐、三条、播州、三木、など刃物で有名な産地は全国いくつかありますが、
堺産をおすすめする理由はいくつかあります。

もちろん職人やメーカーによって様々ですが、地方で分けてみたときに得意な包丁の傾向があります。


堺はその中でもとくに片刃包丁の技術は随一と言ってよく、
他の地方で売られている片刃包丁も高級なものは堺産ということが珍しくありません。



・堺の特性

堺は刃物づくりの歴史上、鍛冶、研ぎ、仕上げを別々の職人が専業で行ってきました。
他の地方は「野鍛冶」と呼ばれる一人で鍛冶から仕上げまでやった職人がルーツなので、
才覚ある職人がいたとしても、使用用途や材質によって処理の仕方も異なるため、
知識の集約が難しく、次代への伝承も難しくなります。

堺ではそれぞれの工程の職人がお互いに注文を付け合ってきました。
生地の焼きの入り方が甘ければすぐに刃付け職人から指摘が入り、
刃付けのバランスが悪いと仕上げの職人に文句を言われる。
ことあるごとに先代や同業者と比較され、知識の蓄積が効率的に進みます。


全国から集まった鍛冶屋が、それぞれの工程でプロフェッショナルになり、
何代にもわたりその技術を磨き上げてきたのが堺の包丁なのです。


・サイズ
人気のサイズは5.5~6寸ですが、これは「捌く魚は大きくても鯛くらいまで」という方が増えているためです。

和食の板前さんは、7~8寸の大き目の出刃と、5寸程度の小出刃を二本持っている方が多いです。

・鋼?ステンレス?
→ 鋼材の特性上、同じ値段であれば鋼の方が切れ味が長持ちし、また砥石へのかかりが良いです。

使ったら水気を取り、使用後にはしっかり乾燥させる必要があります。

一見面倒なように思えますが、すぐに癖になります。作業後にケアをしているとどんどん愛着が湧いてきます。
まるでジーンズや皮財布のように、使い手の仕事が道具に乗り移っていくので、
修理でお預かりした包丁を見ていると飽きません。

ただ時間的に錆びのケアができない、という場合はステンレスにしておいた方が良いでしょう。
最近はステンレスも非常に性能が上がっており、銀三鋼であれば鍛造で粘りも出てくるため、切れ味は鋼に近いです。

ステンレスであろうと鋼であろうと、大事に扱うことが長持ちさせる秘訣です。

・鋼材
同じ鋼材でも大きく価格が違うものがあります。
弊社でも、同じ鋼材で異なるシリーズを揃えております。

例えばハンマーの打ち方で組織の結びつき方や厚みは違いますし、焼き入れの温度、なまし方、刃の付け方、、、

食材が同じでも、調理の仕方で料理の味や値段は大きく変わるのと同じで、
同じ鋼材をどう仕上げるかで性能が変わります。
・研ぎ易い刃になっているか
柄からのぞき込むようにして刃を見たときに、
できるだけまっすぐなものを選ぶようにしましょう。
照明や太陽の光を切れ刃に反射させ、刃先から刃元までゆっくりと走らせてみてください。
乱反射するものは表面がデコボコになっているもので、研いでもなかなか均一な刃がつきません。安く作ろうとすると、ここに差が出やすいです。

-バランス
頭が重いものを選ぶと手首にかかる負担がかなり大きくなります。
逆に重心が柄側にいきすぎている場合は刃先のコントロールがしづらく、こちらも手に負担がかかります。
バランスが取れているだけでなく、重心が親指から少し先あたり(刃元から刃渡りの1/3くらいに重心)にあるとコントロールしやすく疲れにくいです。

黒檀、銀巻き柄や銘木を使ったハンドルは見た目にも美しく、
料理をする腕が鳴るという部分はありつつ、バランスが崩れないように注意したいところです。
-裏押し
出刃包丁の裏面は、輪郭を残してなだらかに凹んでいます。このへこみが和包丁の切れ味の要ですが、
輪郭が綺麗に揃っているものを選びましょう。
また平らな面に刃を置いて、表から輪郭を指で押し、がたつきが無いかも確認するとよいです。