食材にこだわる飲食店が増えた今、料理人が行き着くのが包丁へのこだわり。 包丁の切れ味にこだわるお店は、例外なく美味しい。
「味でつなぐ 料理人探訪」は、グルメサイトのレーティングでは伝えきれない、本当に美味しい店を紹介するシリーズ。
包丁から見えてくる技術、哲学、そして食へのまなざし。 料理人の内面に踏み込み、本質を探る。
第13回目は、天神橋筋商店街にある「天神橋おさかな食堂」。店主の林 佳祐氏にお話を伺った。
食材にこだわる飲食店が増えた今、料理人が行き着くのが包丁へのこだわり。 包丁の切れ味にこだわるお店は、例外なく美味しい。
「味でつなぐ 料理人探訪」は、グルメサイトのレーティングでは伝えきれない、本当に美味しい店を紹介するシリーズ。
包丁から見えてくる技術、哲学、そして食へのまなざし。 料理人の内面に踏み込み、本質を探る。
第13回目は、天神橋筋商店街にある「天神橋おさかな食堂」。店主の林 佳祐氏にお話を伺った。
大阪出身です。大学卒業後はレストランを数軒渡り歩き、スーパーや中央卸売市場なんかでも働いてきたので、いわゆる流通の川上から川下まで一通り経験してきました。この「天神橋おさかな食堂」は2024年8月にオープンさせました。看板メニューはアジフライです。
なぜアジかというと、中央卸売市場の水産会社で働いている時、アフリカに輸出する魚を検体する部署にいたんです。青魚の内臓を隅々まで調べるという作業で、その時は日本で一番アジを触っていたんじゃないでしょうか(笑)そういったこともあって、馴染みのある食材だったんです。
ブランド物と言われる物も含めて、ありとあらゆるアジを試しましたが、あくまで定食屋なので値段との兼ね合いがあります。そのなかで扱える一番クオリティの良い、刺身にも出来るレベルのアジを使っています。
大きければ良いというものではなく、身が分厚すぎると衣との比重が悪くなり、食べた時のふわっとした食感は出ません。僕の理想とするアジフライは衣と身の割合いが1:1。かつ、パン粉がサクッとしていて、身はホロっと崩れるくらいの柔らかさです。そのためにアジの大きさや重さにはこだわっています。
アジフライは薄力粉、卵、パン粉と塩胡椒と非常にシンプルです。どこの店でも基本的に作る工程は一緒だと思います。
荒目の生パン粉もそうですし、魚にもこだわっていますが、その上で、どこまでも基本に忠実に。余計なことはしないことが大切だと思っています。
揚げ物って家庭でも出来ますし、簡単なようで結構奥深くて。1人目のお客様にも1万人目のお客様にも感動する味わいを提供するためには1回1回が勝負。突き詰めていくのは面白いですね。
実はこれまで修行してきた飲食店は、フレンチだったり、何かの記念日や特別な日に訪れるような高単価なお店が多かったんです。
でも大切にしていることは一緒です。オープンキッチンでお客様の目の前で料理を仕立てて、出来立てを召し上がっていただくというライブ感ですね。
アジを目の前で捌くっていうのもまさにそうです。湯気が立つ土鍋から炊き立てのご飯の香りが漂い、熱々のお味噌汁と、目の前で揚げたサクサクのアジフライ――。
自分の作ったアジフライで、たくさんの人の日常に、ちょっとした喜びを添えることができたら嬉しいですね。
当時働いていたレストランで先輩が堺一文字光秀の包丁を使ってたのを覚えています。20歳の時、初めて自分で包丁を購入したのが堺一文字光秀でした。そこからずっと一筋です。
出刃と柳は使い込んで汚れてきました。研ぎには出したことがないので、1度お願いしたいなと思っているところです。
40歳になった今思うのは、自分には料理しかないということ
一昨年に父親を亡くした時、あの世には何も持っていけないんだと改めて感じたんです。 それをきっかけに“世の中に何かを遺したい”という思いが再燃しました。
最後に修行していたお店はフレンチでしたが、一度自分の今までやってきたことだとか、こだわりだとか、そういうものを一旦置いて、より多くの人に向けて挑戦しようと「定食屋」という形での独立を選びました。
結果的に、馴染みのあるアジという食材もそうですし、昔働いていた水産会社の同僚が納品に関わってくれたりと、今までやってきたことが全て現在に繋がっているような感覚があります。
人より独立も遅いですし、沢山回り道をしましたが、「これでやっていくんや。」という覚悟が決まってから応援してくれる人も増えたので、今はやって良かったなと自分の選択を肯定できるようになってきました。
常連さんには色々な方がいます。近所のお母さんや高齢の方、一人暮らしの若い方なんかも結構多いんですよ。ありがとうって言われると自分の居場所ができたと実感しますね。
今は「天神橋おさかな食堂」を安定させていくことが第一ですが、これからたくさん挑戦したいことがあるんです。煮付けも出したいし、お魚の魅力をもっと発信していきたい。なによりメインのアジフライでいつか日本一になりたいですね。
天神橋おさかな食堂
https://www.instagram.com/tenjinbashi_ajifry/
住所
大阪市北区天神橋2-北1-14天満橋東丸ヒガシマル1F
営業時間
ランチ : 11:00 – 14:00
ディナー: 17:00 – 21:00
定休日
第一水曜日・日曜日
「味でつなぐ - 料理人探訪Vol.13 天神橋おさかな食堂」の動画では看板メニューのアジフライの調理シーンをたっぷり収録! ぜひご視聴ください。
堺一文字光秀の出刃、柳刃包丁はこちらから。