2020.06.08

ルポンドシエル

ルポンドシエル
 

包丁にこだわるお店は美味しい。

素材にこだわる飲食店が増えた中、その素材を活かすために、料理人が行きつくのが包丁へのこだわり。
包丁の質や手入れにまでこだわるお店が、まずいわけがない。

グルメサイトのレーティングでは紹介しきれない本当に美味しいお店を、料理人の魅力を通して紹介できたら。

フレンチ大阪代表、12年連続星を獲得するルポンドシエルの料理長は、
どういう道を経て、道具と向き合い、名店の看板を支えるのか。

 

名建築との縁 ※現在は移転。移転後のインタビューはこちら

元々実家は佐世保の方で、父親が大工をやっていて、家に釘とか金槌が転がっていたので、
なんとなく仕事=ものを作る人、という価値観で育ったような気がします。

小学校のころテレビで見た料理天国や天皇の料理番が頭にあり、料理をやろうと思い
大阪の料理専門学校、辻学園のお世話になることにしました。

当時、この建物(ルポンドシエルビルは大正モダンの名建築として名高い/注:現在は移転。移転先の記事はこちら)に辻学園があり
ここで学んでいたので、当時まさかここで働くことになるとは夢にも思わず、不思議な縁だなと思いますね。

 

希望部署ではありませんでしたが、幅広い仕事をさせて貰って結果的には良かったです。

卒業したときは、バーゼルという洋菓子の世界で内閣総理大臣賞を取った社長が経営するお店に入りました。
料理人になりたかったですが、そんな洋菓子の第一人者がいるところなので、
最初は洋菓子をやろうと思っていました。
本場ドイツから毎年人も呼んでいるということで、勉強にもなるなと。

ただお店側の事情もあり、レストラン部門の枚方の店に人が足りないということでそこで働きました。
このお店では、朝はモーニング、昼はランチ、アイドルタイムは喫茶、
夜はディナーと幅広いことを学べたので、結果的には良かったかなと思いますね。

住み込みで働いて、休みもあまりありませんでしたし、
地元に戻ろうと思って、3年経ったのに、蓋を開けると貯金も少なかった。
当時住み込みのシェフのお給料は今よりずっと少なかったです。
充分に勉強させて貰いましたが、もっと技術を学んで違うスタイルを見たく、同じ関西でお店をかわりました。

ホテルでは、より幅広いことが学べましたね。

その後、大津プリンスホテルに入り、最上階のメインダイニングに行きたかったのですが、少しの間宴会、
そして一階のレストランに配属になりました。ただここは前職より更に業務範囲が広くなり、
朝から晩だけでなく24時間、モーニングとルームサービスも加わりました。
そのあたりの仕事は普通にやっているだけで身につくものではないのでありがたいです。

そこで3年間やった後、本格的なレストランに入りたいと思いルポンドシエルにお世話になることになりました。

 

星を取ってからは、毎年「もっと」という気持ちでやるしかない。

そこからは毎日が勉強の日々です。
今は料理長をやらせて頂いていますが、毎年提携しているフランスのレストランから、
二ツ星、三ツ星を経験しているシェフがやってくる。
そういう方々とお仕事をしていると自分はまだまだだと、本当に刺激になります。

ありがたいことに10年連続(インタビュー当時。2019年11月時点で11年連続)で星を頂いていますが、
星を落としたとなると後退です。二ツ星三ツ星を目指しながら努力していくしかない。
大阪で本格的なフレンチを。というコンセプトでやっているので、
斬新な料理やフュージョンのスタイルを前面に出すのは違いますし、
王道のフレンチのマナーの中でいかに喜んでもらえるか。毎日が勉強ですね。

 

毎日が勝負。90名の宴会で、コースの試食をしたが納得いかずすべて作り直した。

世界の第一線で働くシェフは、美食家達をどううならすかということばかり考えています。
日本でも東京なら、世界の名店ランキングに入るような店もある。
そういったところを目指す中で、大阪のお客様に本格的なフレンチが提供できれば良いなと思います。

フレンチの最高峰を目指すことで星が貰えていると思っているので、
信用を落とさないように毎日が勝負です。この前も90名の宴会があり、
コースの中の一皿に納得が行かずすべてゼロからやり直しました。
お客様に定期的に来て頂けるのであれば、毎回新しい発見をしてもらえるようにメニューも変えます。
プライドという言葉で片づけたくはないのですが、せっかくなら良い仕事がしたいですね。

いくらスターシェフがいても、スタッフの質と数がいないと出せない料理がある

せっかく良い環境、スタッフ、設備を預けてもらっているのでもっと期待に答えたいという気持ちがあります。
他店の料理の写真を見ても、大体何人くらいで作っているかわかるようになりました。
要は人数を揃えてチームであたることで始めて出せる料理があるということです。
いくらスターシェフを抱えているお店でも、スタッフの質と数がないと料理の質は出せない。
そういう意味ではこれだけ人材不足の中で、スタッフが豊富にいて料理の幅が出せるのは幸せなことだと思います。

 

道具の手入れまでこだわれる日本人が、世界で成功しているんだと思います。

今日本人のシェフが世界の一流店で活躍していて、リヨンにある星を取ったお店2軒とも日本人のオーナーシェフがいます。
面白いのは、日本人のシェフは必ず包丁のことを聞かれるということ。
私が思うに、道具の手入れまでこだわれる意識の高い日本人が成功しているだけで、
必ずしも日本人全員がちゃんと手入れできているわけではないのですが、
日本人=切れる包丁という印象が少なからずあるようですね。

一文字さんに関わらず世界中で人気になってきている日本の包丁ですが、
硬い包丁も日本にはたくさんあるのですが、硬くて研ぎにくいものもある。
切れ味は良くても研ぎやすくないとダメです。一文字の包丁は研ぎやすさもあるので良いですね。

 

大変ではありますが、世界中のトップシェフ達を意識するとこれくらいやらないとな、と。

毎シーズン、フレンチの最先端かつ王道のエッセンスを取り入れながら、
世界中の良い素材を取り入れては料理して、写真取って、組み合わせを考えて・・とやっているので、
持ち歩いているタブレットは料理の写真でいっぱいです。
大変ではありますが、世界中のトップシェフ達を意識するとこれくらいやらないとな、と。
常に最高のおもてなしができるよう準備しているので、是非楽しみに来て頂ければと思いますね。

 

Le pont de ciel (ルポンドシエル) ※移転

〒540-0031 大阪府大阪市中央区北浜東6−9
06-6947-0777
https://pont-de-ciel.co.jp/


↓移転後
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