2020.04.20

本等 鮨 海馬 本店

本等 鮨 海馬 本店
料理人はより美味しい料理を提供したい一心である。
包丁ブランド堺一文字光秀は、味へのこだわりが道具にまで昇華した料理人をたくさん知っている。

グルメサイトのレーティングでは紹介しきれない本当に美味しいお店を、料理人の魅力を通して紹介できたら。

そんな思いから、「味でつなぐ」企画は始まった。
第二回は、スタイリッシュな堀江にある寿司店を紹介したい。
 

五感で楽しむ鮨

四ツ橋駅の出口を出て2~3分ほど。和が盛り込まれつつも、鮮やかで開放的な店構えが目に入る。
本格的な鮨店では珍しく入り口はガラス貼りで、趣向の凝らされた内装と、ほどよい緊張感の板場が入り口の外から確認できる

職人の眼光

「職人の眼光」はいつ宿るのだろうか。板前の「さあ、食べてみろ」という、物腰は柔らかくとも自信と経験に裏打ちされた鋭いまなざしは、包丁職人のそれとよく似ている。作ったものに語らせたい、あまり自分の言葉で装飾はしたくない。

「専門学校は出ていません。割と勢いで入ってますね。」
22年前、18歳のときに友人に誘われ、和歌山の旅館で働くことになった。調理の仕事をするとは当時考えていなかった。「人が足りないから手伝って欲しい。」言われるがままに調理場に入った仕事が、今は人気寿司店の花板までつながった。
 
「和歌山から帰った後は、難波の、当時有名だった料亭に入りました。」そのときもホールで仕事をするつもりだったが、和歌山の経験を買われ調理場に入る。そこで待っていたのは、当時だと珍しくはなかったかも知れない、過度な教育だった。「いや、教えるとかじゃないですよ。あまり大きな声では言えませんが、いわゆる『かわいがり』みたいなことはかなりされました。今考えると、それでついて来られない人間をふるいに掛けようとしていたんですね」少しでも先輩の気に障ることがあるとすぐに物が飛んでくる現場で、清山さんは決意を固める。「この先輩達を見返してやる」

左利きを右利きに矯正

一刻も早く先輩を追い抜きたい。もともと「勢いで入った」料理の世界だったが、苦しい思いをしながら働く中で、貪欲に技術を追い求める。「もっと技術をつけたい」本や、先輩の技術を見よう見まねで身につけようとする中で、一つの壁があった。
 
清山さんは左利きだったのである。「左利きが壁?」と思う方もいるかも知れないが、魚の置き方から手の動きまで、和食の所作は右利きを想定して作られている。こと、完全な片刃を使う和包丁は西洋料理とは違い、包丁も左利き用を揃えなければならず、作業も真逆からのアプローチになる。左利きの清山さんからすると、毎回入ってくる情報を左右逆に変換して技術を自分のものにせねばならなかった。両親に「箸は右で持ちなさい」と矯正されたことを除いて、すべて左手でやってきた。ここで学べることをいち早く身に着けたい。技術をゼロから覚え直す覚悟で、右利き用の包丁を買い直した。

重量、切れ味、硬さが気に入った

始めて買ったのが堺一文字光秀 青鋼 紋鍛錬。最初に買った右利き用の包丁だが、今も同じものを使っている。「もうこれで三代目です。左利きなので力が入れにくいのに、切れ味が良いので重みだけコントロールすれば切れてくれる。硬いのも良い。」
「やはり包丁仕事が板前の花だと思う。できれば長いものを使いたいし、お客様も仕事をみることで楽しめると思う。このお店も、カウンターにネタケースは置かず、仕事を見てもらえるようにしてある。」
 
よく使い込まれており小さくなっているのにかかわらず、形状は新品の柳刃包丁とほとんど変わらない。理想的なメンテナンスがされている。「いや、別に見よう見まねですよ。自己流で研ぐ人はよく刃が凹む?それは先が研げてないねん。ちゃんと先は角度つけて研いであげないと。」
自分のことを語る時はぶっきらぼうだが、技術と自問自答を繰り返してきているため、良い仕事ができる理由に対しては明確に答えることができる。

魚の質がいいなんてどの店でも言える

「今は輸送技術が良くなっているのでどの店も新鮮、とかいい魚がある、と言える。でも、本当に美味しい旬の魚には目利きが必要。例えば、夏が旬と言われている鱧を初夏に旬、と言って出すお店もあるが、実は秋の方が脂が乗って美味しいということもある。初鰹だってそう。年によって当たりはずれがある。お客さんに求められることもあるが、うちの店は本当に美味しいネタしか出さない。利き酒師やソムリエもいるからネタに合わせて美味しいお酒も出せる。日によって違うのでその日のおすすめを是非聞いて欲しいですね。」
 
鮮やかさと和の落ち着きが同居した空間、清山さんの包丁さばきと、利き酒師やソムリエによる魚に合うおすすめのお酒。五感で楽しめるお店は、何度でも来たくなる。
 

本等 鮨 海馬 本店

住所       大阪市西区北堀江1-15-22
 
営業時間 ランチ 11:30〜14:00(1階でのみ営業、ランチメニューのみ)、ディナー 17:00〜23:30(L.O. 23:00)
 
定休日    不定休
 
電話番号 06-6532-2918
 
予約 https://r.gnavi.co.jp/298bhttp0000